大学進学で住民票を移すか迷っていませんか?手続きのメリット・デメリットを徹底解説

大学進学のタイミングで引っ越しをして、ひとり暮らしを始めるときに悩ましいのが住民票を移すかどうかという問題です。周りの友だちに聞いてみても、移すという人もいれば、そのまま残すという人もいて、どちらにすればいいのか判断できず迷ってしまいますよね。

ここではそのような人のために、そもそも住民票の移動がなぜ必要なのかについて説明し、その手続き方法や移動させることによるメリット・デメリットについて、わかりやすく解説していきます。これから大学進学で親元を離れるという人は、ぜひ参考にしてください。

そもそも住民票の移動って何?

大学進学のタイミングで住民票を移すかどうか説明する前に、まずは住民票についての基礎知識を解説していきます。大人になるとさまざまな場面で必要になる住民票ですが、大人でも多くの人が実は住民票の役割を正確には把握していないのが実情。

これからひとり暮らしを始めるのであれば、ぜひこの機会に、住民票の役割や移動が必要になる理由などをしっかりと頭に入れておきましょう。

住民票の役割

そもそも住民票とはどういうものなのか把握していない人もいると思いますので、ここでは住民票にどのような役割があるのかをご紹介します。

住民票というのは、個人を特定する情報(氏名・生年月日・マイナンバーなど)と居住している住所が記録されており、市区町村は住民票をまとめたものを住民基本台帳として管理しています。市区町村はこの住民基本台帳をもとにして、さまざまな行政サービスを提供しています。

たとえば小学校や中学校といった学校教育も行政サービスのひとつで、公立の小中学校での学校教育は、原則としてその学校がある市区町村の住民だけが利用できます。他にも選挙権や社会保障の管理なども住民票に基づいて行われます。

最初から少し複雑になってしまいましたが、ここでは「住民票は個人がどこを拠点に生活しているかを記録するもの」で、その管理を市区町村単位で行っていると考えてください。

大学進学で住民票の移動が必要な理由

住民票は個人がどこを拠点に生活しているかを記録しているものですので、引っ越しをした場合には、原則として住民票の移動が必要になります。その根拠となっているのが住民基本台帳法の第22条・23条・25条で、14日以内に届出を出さないと、5万円以下の過料に処せられることもあります。

大学生ももちろんその対象ですが、進学のために一時的に実家を離れているだけで、卒業後は実家に戻る予定なら、法律違反とされることはありません。もっとも、それは「予定」であり、就職先の関係で、実家に戻れなかったからといって過料を処せられることもありません。

このため、大学生は住民票を移すかどうかは個別の判断になり、移していないからといって咎められることもありません。ただし、あくまでも例外であり、原則でいえば新居に住民票を移す必要があるということは頭の片隅に置いておいてください。

住民票を移すメリット

大学進学による引っ越しの場合、住民票を移さなくても法律上の問題はありません。ただし、原則としては住民票を移すのがルールであり、しかも住民票を移動させることには下記のようなメリットがあります。

  1. 行政サービスを受けられる
  2. 居住地域の選挙に参加できる
  3. 運転免許証の更新を居住地域で行える

それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。

行政サービスを受けられる

住民票を移すことで、居住地域の行政サービスを受けられるようになります。たとえば住民票の写しや印鑑証明書などを市役所で発行してもらえるので、それらを取得するために地元に戻る必要がなくなります。

また、住民票を移動させておくと、プールや温泉などの公営施設で、市民割引サービスを受けられるようになります。

居住地域の選挙に参加できる

選挙権は住民票に基づいて管理しているため、住民票を移動させておくことで、居住地域の選挙に参加できるようになります。反対に住民票を移動していないと、地元の選挙に参加することになるため、投票するために地元に戻らなくてはいけなくなります。

選挙には行かないという人もいるかもしれませんが、行くか行かないかは個人の判断であり、大事なのは投票できる環境にあるということです。住民票を移しておくことで、その地域の政治に投票という形で参加できる環境を整えることができます。

運転免許証の取得や更新を居住地域で行える

運転免許証を取得するには、自分の住民票がある地域の運転免許試験場や運転免許センターで、運転免許の本試験を受験する必要があります。このため、住民票を地元に残している場合、在学中に運転免許を取得するとなると、試験のために地元に戻る必要があります。

さらに更新手続きは、運転免許証に記載されている住所地を管轄する警察の窓口で行わなくてはいけません。免許取得後5年未満の運転免許証有効期限は3年ですので、大学入学前後に運転免許証を取得していた場合、在学中に必ず更新のタイミングがやってきます。

このため、住民票を移していないと運転免許証更新のタイミングでも、地元に帰らなくてはいけなくなります。ところがきちんと住民票を移しておけば、居住地域で運転免許を取得できますし、更新も最寄りの警察署で行えるようになります。

住民票を移すデメリット

住民票を大学進学に合わせて移すことにメリットがあるなら、移しておいたほうがよいように思えますが、住民票を移すことはメリットだけでなくデメリットもあります。移してから後悔しないためにも、デメリットも把握しておきましょう。

  1. 地元の成人式に参加できなくなる可能性がある
  2. 引っ越しのタイミングで手続きが必要になる
  3. 実家との連絡頻度が減る

住民票を移すデメリットはこの3点になります。それぞれのデメリットについても、内容を詳しく見ていきましょう。

地元の成人式に参加できなくなる可能性がある

成人式の案内は、住民票の情報をもとにして該当する人に送られるようになっています。このため、大学の近くの住所に住民票を移している場合、住民票がある市区町村の成人式案内が届き、知り合いが誰もいない成人式に参加することになります。

ただし多くの市区町村で、案内状なしで成人式には参加できるようになっています。とはいえ市区町村ごとに参加可否の判断が異なるため、地元の成人式に出たいなら、事前に参加可能かどうかを地元の市区町村に問い合わせしておく必要があります。

引っ越しのタイミングで手続きが必要になる

住民票を移すためには、引っ越しのタイミングで行政手続きが必要になります。おそらくほとんどの人が住民票を移すのは初めての体験になるため、手続きの手順もわかりませんし、申請内容に不備がないか不安にもなるかと思います。

市役所での手続きになるため平日にしか申請できず、大学の授業や部活、アルバイトなどの関係で、なかなか手続きができないというケースも考えられます。住民票を残しておけばこのような煩わしさがないため、住民票の移動手続きそのものが大きなデメリットになります。

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実家との連絡頻度が減る

住民票を移すということは、ある意味で家族からの独立を意味します。もちろん扶養されている立場ですので完全な独立ではありませんが、「家を出た」という気持ちが強くなり、大学卒業後も実家に戻らずに、1人暮らしを続ける要因になります。

また、住民票が移動しているので、選挙や行政サービスの手続きなどのために地元に帰る必要がなくなり、住民票が残っている場合と比べて実家との接点が少なくなってしまいます。それがデメリットになるかどうかは人によりますが、実家との連絡頻度が減りやすいということは覚えておいてください。

住民票を移動するときの手続き

住民票を移すことにメリットがあると感じて、実際に住民票を移動させると決めたものの、どのような手続きをすればいいのかわからず困っている人もいますよね。そこでここでは、住民票を新居のある住所に移動するときの手続き方法について解説していきます。

住民票の移動手続きの基本的な流れ

住民票を移動させるときの流れは下記のようになります。

転出届の提出
転出証明書の受け取り
新居への引っ越し
転入届の提出

まずは実家のある市区町村の役場で転出届を提出します。転出届の用紙は役場に置いてありますので、それに記入して窓口に提出してください。転出届が受理されると転出証明書が交付されます。この転出証明書は重要な書類ですので、紛失しないように気をつけてください。

その後、新居に引っ越しをしたら、新居のある市区町村の役場で転入届を提出します。このとき先ほどの転出証明書といくつかの書類が必要になります。それらを提出して受理されたら、住民票の移動が完了します。

運転免許証の住所変更手続きのためなどに、住民票の写しが必要になる場合には、転入届の提出と合わせて、発行の手続きを行ってください。

※マイナンバーカードを使って転出の届出をした場合には、転出証明書は発行されません。

住民票の移動手続きに必要な書類

住民票の移動手続きをするときには、いくつかの書類が必要になります。転出届と転入届で必要になる書類が違いますので、それぞれで必要になる書類を見ていきましょう。

転出届に必要な書類

  • マイナンバーカード(所有している場合)
  • 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
  • 印鑑

※マイナンバーカードがある場合には、本人確認書類は不要です。印鑑も市区町村によっては必要ありません。

転入届に必要な書類

  • 転出証明書
  • マイナンバーカード(所有している場合)
  • 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
  • 在学証明書(小中学生の子どもがいる場合のみなので、大学進学時は不要)
  • 印鑑

※マイナンバーカードがある場合には、本人確認書類は不要です。印鑑も市区町村によっては必要ありません。

住民票の移動手続きは提出期限を守ること

転出届も転入届も提出期限が設定されています。

  • 転出届:引っ越し予定日の14日前から引っ越し後14日以内
  • 転入届:新しい住所に住み始めた日から引っ越し後14日以内

もしこの期限内に手続きを完了させなかった場合には、すでにお伝えしましたように、最大5万円の過料が処せられることもありのでご注意ください。

また、原則として本人が手続きをする必要があります。市区町村によっては代理人に依頼することも可能ですが、その手順や必要となる書類は市区町村ごとに違います。必ず事前に問い合わせして確認しておきましょう。

住民票を移すかどうかで迷ったときの判断基準

大学進学に合わせて住民票を移すかどうかは個別の判断になるとお伝えしましたが、移すことによるメリットだけでなくデメリットもあるとなると、自分で判断するのが難しいですよね。ここではそのような人のために、迷ったときの判断基準をご紹介していきます。

住民票を移すかどうかで迷ったときには、下記に該当するかどうかチェックしてみましょう。

  • 実家が遠くて頻繁には戻れない
  • 運転免許証を取得済み、もしくは取得する予定
  • 大学を卒業しても実家に戻らず就職する予定
  • 在学中にクレジットカードを作りたい
  • 住民限定の行政サービスを利用したい
  • 暮らしている地域で選挙に参加したい

いずれかひとつでも該当する場合には、大学進学に合わせて住民票を移しましょう。それぞれの理由について詳しく解説していきます。

実家が遠くて頻繁には戻れない

関東の大学に進学して、実家は九州にあるという場合には、簡単には実家に戻れませんよね。それなのに、行政手続きなどのために実家に帰らなくてはいけないとなると、時間がかかるだけでなく金銭的な負担も大きくなってしまいます。

実家に帰るのに数万円かかったり、日帰りで戻ってこられなかったりする場合には、住民票を新居のある住所に移しておきましょう。

運転免許証を取得済み、もしくは取得する予定

すでに説明しましたように、運転免許証を取得している場合で、住民票を地元に残している場合には、更新手続きのために実家に帰る必要があります。これから運転免許証を取得するという場合も同様で、地元に帰って試験を受けることになります。

地元が隣県で、それほど時間も交通費もかからないなら住民票を移さなくても構いませんが、そうでないならムダな移動と出費を回避するために住民票を移してしまいましょう。

大学を卒業しても実家に戻らず就職する予定

大学を卒業してから実家に戻るつもりではないという人も、住民票を移しておきましょう。そもそも大学生が住民票を移さなくてもいいのは、在学中は仮住まいで、生活の拠点は実家にあるという建前があるためです。

卒業後に実家で暮らすというライフプランになっていないなら、親から独立する意識を高めるためにも住所に移してください。

在学中にクレジットカードを作りたい

クレジットカードを作るときには、本人確認書類の住所と申請書に記載した現住所が一致していなくてはいけません。住民票を移していない場合、現住所を実家にしなくてはいけないのですが、そうするとクレジットカードは実家に送られてしまいます。

このとき「本人限定受取郵便」でクレジットカードが届いた場合には、地元の郵便局にまで取りに行かなくてはいけなくなります。そのような手間を省くためにも、在学中にクレジットカードを作りたいなら、住民票は移しておきましょう。

住民限定の行政サービスを利用したい

図書館や体育館などの施設は、住民票を移動させていなくても、大学の学生証があれば利用できますが、市民のみしか利用できない行政サービスを受けたり市民限定イベントに参加したりしたいなら、住民票を移動させる必要があります。

暮らしている地域で選挙に参加したい

すでにお伝えしましたように、選挙権の管理は市区町村が行います。このため、在学中に暮らしている地域に住民票を移すことで、その地域の選挙に投票できるようになります。

まだ地域政策などに興味がないかもしれませんが、卒業後も同じ地域でクラス予定で、地域の暮らしをよりよいものにしたいという意志があるなら、住民票の移動を検討してください。

まとめ

大学生は住民票を移さなくても法律違反にはならないため、住民票をそのままにするケースも少なくありません。とくに大学卒業後に実家に戻る予定という場合には、2回も住民票を移さなくてはいけなくなるので、できれば移したくないという人もいますよね。

もちろん、それでも問題ありませんが、住民票を地元に残しておくと、運転免許証の取得や更新、クレジットカードの受け取りのために実家に戻らなくてはいけなくなります。実家が近い場合にはそれほど問題ありませんが、遠方から上京しているような場合には交通費も高額になります。

そのようなデメリットがあることを考えると、特別な理由がない限り住民票は移しておくのがおすすめです。ただし、実家を継ぐことが決まっている場合など、親が住民票の移動に反対するケースもあります。どちらを選ぶにしても、必ず親と相談して決めるようにしてください。