2018年の春から引越し難民という言葉が広まりだし、2019年には引越しが決まっているのに引越し業者が見つからないということが、社会問題としてニュースなどでも取り上げられました。このため3月4月の繁忙期を避けて、ゴールデンウィークの引越しを考えている人も増えつつあります。
でも大型連休のゴールデンウィークに引越しをするとなると、繁忙期並みに料金が高くなりそうで不安ですよね。そこでここでは、ゴールデンウィークの引越し事情と料金、そして相場以下の料金で引越しをするためのコツをご紹介していきます。
この記事の目次
引越し難民が生まれた理由とゴールデンウィークへの影響
まずは引越し難民が増えてしまった理由と、それがゴールデンウィークの引越しにどのような影響を与えているか解説していきます。少し難しい話ですが、引越しを繁忙期にするかゴールデンウィークにするかで迷っている人の参考になるかと思いますので、頭に入れておいてください。
2019年の働き方改革関連法案の影響で、引越し業界の仕組みが大きく変化しました。
- 残業時間は45時間まで(繁忙期は100時間)
- 60時間を超える残業には5割増しの割増賃金発生
- 慢性的な人手不足
引越し業界は長時間労働によって支えられていた業界ですが、働き方改革の影響で長時間労働ができなくなりました。さらに運送業界は慢性的な人手不足にあり、1社あたりで受注できる引越し件数が減っています。
それでも繁忙期の人の移動は変わらないため、引越し業界全体がキャパオーバーになっており、2019年に引越し難民が爆発的に増えてしまいました。また引越し業者は利益を減らすわけにはいかないので、このタイミングで引越し料金の引き上げを行っています。
これにより、繁忙期の引越し料金が大幅にアップしたため、引越し時期をゴールデンウィークにずらしたという人もいます。そうなってくると気になるのはゴールデンウィークの引越し料金相場ですよね。繁忙期や通常期と比べてどれくらい引越し料金が違うのか、次章で詳しく解説していきます。
ゴールデンウィークの引越し料金は繁忙期よりも安い
まずはゴールデンウィークの引越し料金が、繁忙期(3月〜4月)や通常期(5月〜2月)と比べてどれくらいの金額になるのか見ていきましょう。ゴールデンウィークだけのデータがないため、ゴールデンウィークは4月下旬〜5月上旬の平均額としてご紹介します。
繁忙期(3月〜4月) | |
単身(荷物多) | 75,600円 |
2人家族 | 104,880円 |
人家族 | 140,000円 |
通常期(5月〜2月) | |
単身(荷物多) | 44,280円 |
2人家族 | 70,000円 |
人家族 | 80,000円 |
ゴールデンウィーク(4月下旬〜5月上旬) | |
単身(荷物多) | 50,000円 |
2人家族 | 78,650円 |
人家族 | 94,500円 |
料金は近距離から長距離までの平均ですので参考値ですが、単身引越しでも家族引越しでも共通しているのは、繁忙期よりは格安で通常期よりは10〜15%程度高いということです。ゴールデンウィークは引越し料金が高いと言われていますが、実際には通常期よりは少し高い程度で、3月や4月に引越しするよりも明らかに安く引越しできることがわかります。
ゴールデンウィークは連休で仕事を休みやすくなるとはいえ、繁忙期と比べると引越し件数は少なく引越し業者にも余裕があります。このため思ったほどは高額な料金にはなっていないというのが実情です。
ゴールデンウィークの引越しが意外と安い理由
一般的に引越し料金は移動距離と荷物の量に比例して高くなります。宅配便を送るときに遠くに送ったり、箱のサイズが大きくなったりすると料金が上がるのと同じ仕組みです。ただ、引越し料金は宅配便と違って時期による価格変動があります。
なぜそのようなことになるのか、その理由を詳しく解説していきます。
引越し業者は閑散期になると価格競争が起きる
引越し業者の多くが、繁忙期にしっかり稼げるようにトラックや作業スタッフを抱えています。3〜4月はどの業者もトラックもスタッフもフル稼働しており、場合によっては依頼を受けても断らなくてはいけないほど引越し案件があります。
ところが5月以降は人の移動が大幅に減り、引越し件数は半数近くにまで落ち込みます。稼働率が100%だったのが大幅に減るので、本当ならこの時期に引越し料金を上げて、スタッフの給料を稼ぐ必要があります。ところが、どの業者も仕事がない状態なので、引越し料金を上げてしまうと他社に仕事を取られてしまいます。
むしろ確実に契約してもらうためには、通常期は大幅に値下げする必要があります。そうなると通常期は薄利少売になるため、引越し業者は赤字にならないようにするために繁忙期の料金を高く設定するしかありません。その結果、繁忙期と通常期で引越し料金に大きな開きが生まれるというわけです。
このように引越し料金は需要と供給のバランスによって決まり、繁忙期が終わった直後のゴールデンウィークは引越し業者の稼働率が下がるため、引越し料金も合わせて安くなるというわけです。ただし、連休中で仕事を休むことなく引越しできるということで需要がやや増えるというのもあって、通常期よりも10〜15%程度高くなっています。
ゴールデンウィークは繁忙期よりも需要が大幅に減る
5月になるとそんなに需要が減るものなの?と思うかもしれませんので、実際にどれくらいの人が引越しをしているのか、具体的な数字を見ていきましょう。
2019年2月 | 約37万人 |
---|---|
2019年3月 | 約91万人 |
2019年4月 | 約77万人 |
2019年5月 | 約42万人 |
2019年6月 | 約35万人 |
こちらは住民票の移動を行った人数ですので、引越し件数と同じわけではありません。とはいえ、2019年3月に住所を変えた人は約91万人いるのに対して、5月に住所を変えた人は半数以下の約42万人しかいません。引越し件数が大幅に減るのは明らかです。
日本では進学や就職、転勤などの影響でどうしても3月までに引越しなくてはいけない人が多く、いくらゴールデンウィークのほうがリーズナブルに引越しできるとしても、あえて時期をずらすという人は少数派です。
ゴールデンウィークに引越しする人が少ないわけではありませんが、通常期の休日よりもやや多い程度。業者のキャパシティを考えたら需要が足りておらず、業者は価格競争をして料金を下げるしかなくなるというわけです。
ゴールデンウィークに引越しするメリット
通常期よりはやや割高になるゴールデンウィークの引越しですが、料金が上がってでもそのタイミングで引越しをする人が一定数いるのは下記のようなメリットがあるためです。
- 仕事が休みで新生活に移行しやすい
- 3月4月と比べると割安
- 天候がよくスムーズに引越しできる
それぞれのメリットについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
仕事が休みで新生活に移行しやすい
ゴールデンウィークは長期間仕事が休みになるので、有給休暇などを取得せずに荷造りから荷解きまでを一気に終わらせることができます。2019年のゴールデンウィークは10連休でしたが、これだけ長い休みがあれば、ドタバタすることなく新生活へと移行していけます。
このためゴールデンウィークの引越しは、手続き関連のスケジュールをしっかりと立てて行う必要があります。
3月4月と比べると割安
すでに少しお話しましたが、ゴールデンウィークは通常期よりは割高ですが、3〜4月の繁忙期と比べると圧倒的に割安です。
同都道府県内 | |
3月・単身 | 6.3万円 |
5月・単身 | 5.6万円 |
同都道府県外 | |
3月・家族 | 24.2万円 |
5月・家族 | 12.6万円 |
単身で同都道府県内であれば、それほど料金に差はありませんが、家族で同都道府県外への引越しをする場合には、3月と5月で倍近く料金が違います。ゴールデンウィークで多少割高になったとしても繁忙期よりも格安です。
2019年以降に繁忙期の引越しが高騰しましたが、ゴールデンウィークはそこまで変化はありません。「ゴールデンウィークは高いから、連休明けのほうがいい」とアドバイスしているケースもありますが、連休中と連休明けではそこまで大きく変わりません。
天候がよくスムーズに引越しできる
ゴールデンウィークの引越しするメリットとして、もうひとつ挙げられるのが「天候が安定している」点にあります。3月は春先で天候が変わりやすく、強風や雨などの悪天候の中での引越しになることもありますが、ゴールデンウィークは比較的穏やかで、引越し作業をスムーズに進められます。
繁忙期ほど忙しくはなく、さらに気候がいいのとが合わさって、現場スタッフの対応に余裕があります。荷物の運搬も急ぎすぎず丁寧に行ってもらえるというのも、ゴールデンウィークに引越しをするメリットになります。
ゴールデンウィークの引越しで起きやすいトラブル
繁忙期よりもリーズナブルな料金で引越しできるゴールデンウィークですが、世の中が休日になっているこのタイミングだからこそ起きるトラブルがあります。実際に起きたトラブルをいくつかご紹介していきます。
道路が渋滞して荷物が深夜に到着
ゴールデンウィークで悩ましいのが主要幹線道路の渋滞です。20〜30km程度の引越しなら、渋滞していない道路を選んで引越しできますが、100km以上の移動となるとそうもいきません。このため、ゴールデンウィークの引越しは渋滞に巻き込まれて遅延しがちです。
自分の引越しが午前中の1番目ならまだいいのですが、他の引越しのあとに入っていると、前の引越しで渋滞に引っかかり、そして自分の引越しでも同じく渋滞にはまって、荷物の到着が大幅に遅れて深夜になってしまったなんてこともあります。
また、引越しのトラックは予定通りに到着したけど、依頼者が渋滞に巻き込まれて荷物の到着時間に間に合わなかったというトラブルもあります。ゴールデンウィークは行楽地へ向かう車などで、道路がいつもよりも渋滞しやすいので気をつけましょう。
管理会社が休みで新居でのトラブルに対応できない
ゴールデンウィークは管理会社が休みにしていることも多く、新居に入居して「エアコンが動かない」「お湯が出ない」などのトラブルが起きても、すぐに対応してもらえません。新居での電気、ガス、水道などのライフライントラブルは意外と多く、しばらくは何かと不便な生活を強いられます。
また、引越し前に鍵を預かっていたのに、引越し作業中に鍵をなくしてしまったけど管理会社はお休みで新居に入れないなんてこともあります。この場合は、引越し業者に荷物の一時預かりをお願いするしかありませんが、必ずしも対応できるとは限りません。
管理会社
発生する可能性は低いトラブルですが、絶対に起きないわけではありません。ゴールデンウィークの引越しでは管理会社の稼働日をチェックしておき、休みだった場合の連絡先を確認しておきましょう。
引越し業者から高額な見積金額を提示された
引越し業者にゴールデンウィークの引越しで見積依頼をしたところ、繁忙期とそれほど変わらない金額を提示されたという話をよく耳にします。引越し業者は「連休中で繁忙期と変わらないくらい忙しいから」と説明しますが、もちろんそんなことはありません。
引越し業者は少しでも利益を得たいため、高額な見積金額を提示しているだけです。実際に値引き交渉をしたところ、提示された金額の半額近くまで値引きしてくれたという話もあります。とはいえ、相場がわかっていないと提示された金額が高いのか妥当なのかわかりませんよね。
このためゴールデンウィークに限らず、引越しをするときには2〜4社くらいに相見積もりをするのが一般的です。4社くらいから見積金額が出てくれば、引越し業者が出してきた金額が妥当かどうかの判断ができます。面倒だからという理由で1社だけに見積り依頼すると、相場よりも高値で引越しすることになりかねないので注意してください。
ゴールデンウィークに引越しをするときの注意点
ゴールデンウィークで起きやすいトラブルを踏まえた上で、このタイミングでの引越しで具体的に注意すべきポイントをまとめました。
- 引越しが決まったら早めに予約する
- 時間に余裕を持って引越し当日スケジュールを組む
- 混載便やフリー便の利用は避ける
- 自分たちだけでの引越しは避ける
この時期の引越しするときには、この4点をしっかりと頭に入れておきましょう。それぞれの注意点を詳しく解説していきます。
引越しが決まったら早めに予約する
繁忙期ほどでもないにしても、料金が安い引越し業者や、サービスが充実している人気の引越し業者から予約が埋まっていきます。引越し業者も繁忙期ほど案件を詰めこむこともないので、のんびりしていると、悪い条件での引越ししか残っておらず、高値をふっかけられることがあります。
業者選定を1日先送りしたことで、予約が埋まってしまうこともあります。繁忙期じゃないから大丈夫だろうと考えるのではなく、引越し先の住所が決まったらすぐに見積依頼をして業者を確保しましょう。
時間に余裕を持って引越し当日スケジュールを組む
連休中は荷物も自分自身もスムーズに移動できません。高速道路だけでなく一般道も混みやすく、渋滞にはまると搬入が予定よりも数時間遅くなることもあります。
- 引越し当日に他の予定を入れない
- 自分もしくは家族の誰か1人は時間の読める方法で移動する
この2点をしっかりと頭に入れておきましょう。まず、業者の到着が遅れることを想定しておきましょう。搬出も搬入も遅れやすいので、作業スタッフとこまめに連絡を取り合ってください。
また、業者だけ新居に到着して、自分たちが間に合わないというのは避けましょう。必ず1人は公共の交通機関を使って、業者よりも先に新居に到着しておきましょう。それが難しい場合には、親しい友人などに頼んで、新居で待機してもらいましょう。
混載便やフリー便の利用は避ける
ゴールデンウィークの引越しを安くする方法として、混載便やフリー便を勧めている人もいますが、これはできるだけ避けましょう。ただでさえ時間が読めないのに、これらを使うと引越しがいつ始まって、いつ終わるのかがまったくわからなくなります。
混載便の場合には、荷物の到着が予定よりも大幅に遅れてしまうこともあります。いくら時間に余裕があるとはいえ、到着時間がわからないと生活用品の買い出しに行くこともできません。
混載便はやめる
1円でも安く引越したいなら混載便やフリー便もありですが、ゴールデンウィークでの利用はおすすめしません。
自分たちだけでの引越しは避ける
ゴールデンウィークは周りの人もお休みなので、友人に依頼して自分たちだけで引越ししようと考えている人もいるかと思います。ただ、この方法もあまりおすすめしません。
レンタカーを借りるにしても、いつ返却できるのかわからないため、長めに借りなくてはいけなくなり割高です。友人へのお礼も必要ですし、移動に時間がかかると拘束時間が長くなり、友人に負担をかけてしまいます。
同じ市内の引越しで荷物が少ないというようなケースなら、自分たちだけで引越しするという選択肢もありますが、遠方への引越しは多少費用がかかっても、ゴールデンウィークだけは業者に依頼するのがおすすめです。
ゴールデンウィークでも格安で引越しするポイント
ゴールデンウィークの引越し料金は繁忙期ほど高くはありませんが、ちょっとした工夫で通常期とそれほど変わらないくらいの格安料金で引越しできます。そこで、ここでは、連休中の引越しを安くするためのポイントをご紹介していきます。
できるだけ荷物を減らしておく
引越し料金は荷物の量と移動距離で決まります。まずは荷物を少しでも減らしておきましょう。引越しは古くなったアイテムや、「念のため」と思ってとっておいたアイテムを断舎離するチャンスですので、徹底して持ち物を処分しましょう。
冷蔵庫や洗濯機といった家電も10年以上使っているなら、引越しを機に買い替えてください。新しい家電を買うのにお金がかかりますが、寿命が近い家電は引越しのタイミングで故障する可能性が高く、せっかく運んだのに引越し先で買い替えるなんてことがよくあります。
まだ使える家電を手放す必要はありませんが、すでに動きが悪かったり、異音がするようであればこのタイミングで捨てて、新居で新しい家電を揃えましょう。
飛び石連休の間を狙って引越しする
ゴールデンウィークといっても2019年のような10連休になることは珍しく、どこかで平日を挟む飛び石連休になるケースがほとんどです。この飛び石連休の間にある平日は、利用者が少ないため他の日よりも引越し料金が安く設定されています。
仕事を休まなくてはいけませんが、飛び石連休は比較的有給休暇を取得しやすいので、料金を抑えたい人には最適な日取りになります。大手引越し業者はゴールデンウィークの混雑具合をホームページで公開していますので、引越し日を決める時の参考にしましょう。
ただし連休最終日は料金が安くても、ゴールデンウィークであるメリットがほとんどありません。道路は渋滞していて引越しに時間がかかるのに、翌日から仕事になりドタバタします。できるだけ連休最終日は避けておきましょう。
相見積もりにして業者同士で競い合わせる
引越し料金を下げるために、最もおすすめなのが「相見積もり」です。複数の業者に見積依頼をして、業者同士で競争させることで、引越し料金を限界まで下げさせることができます。ゴールデンウィークはどの業者も1件でも多く引越しをこなしたいので、かなりの割引が期待できます。
2〜4社くらいで相見積もりをするのが理想ですが、1社ずつ見積依頼をするのは手間と時間がかかってしまいます。そこでおすすめなのが引越し一括見積もりサイトの活用です。このサービスは、1度の申込みで複数の業者にまとめて見積依頼できるので、申込みの手間が大幅に削減できます。
さらに、依頼を受けた業者は相見積もりであることを事前に把握しているので、何も言わなくても最初から駆け引きなしで自社の出せる最安値を提示してくれます。値引き交渉が苦手という人でも、これならゴールデンウィークに格安で引越しできます。
この方法なら相場よりも確実に安く引越しできますので、格安での引越しを希望する人は引越し一括見積もりサイトを利用して、相見積もりの形で見積依頼しましょう。
まとめ
インターネットで調べていると「ゴールデンウィークの引越し料金は高額だから、引越しはゴールデンウィーク明けにしましょう」という情報がたくさんありますが、きちんと調べてみるとゴールデンウィークの引越しはそれほど高額ではないことがわかります。
もちろん通常期よりは高額ですが、10〜15%高い程度でむしろ会社を休む必要がないことと、引越し後の荷解きに時間をかけられるという点では、メリットの多い引越しのタイミングになります。とはいえ渋滞に巻き込まれやすく、管理会社との連絡が取りにくくなるのも事実です。
引越しをするときには十分に時間の余裕を持って、なおかつ想定されるトラブルについては、事前に対策をしっかりと行っておきましょう。
また、少しでも安く引越しをしたいのであれば、引越し一括見積もりサイトの利用がおすすめです。相見積もりにして競わせることで、通常期と変わらない値段で引越しできることもありますので、予算が限られているという人はぜひ活用してみてください。